雑記

今の勢いを逃したら、また積みラノベが増えるな、と思ってもう一冊読了。

 

今回読んだのは帝国の勇者ってラノベ

これもGA文庫の奨励賞らしいんだけど……奨励賞ってこんな感じか、っていう。

総合的にみると前回読んだ自重しないヤツと同じくらいの得点だった気がする。

 

全体的な雰囲気は、第一次大戦くらいの文明レベルに魔法、魔術的な要素とかファンタジー的なものをぶち込んで、作者のやりやすい環境を作ったって感じ。

ライフルとか出てくるけど、その構造的にも一次大戦レベルかな。

ただ、航空技術はあんまり発展してないっぽくて、飛空艇が超希少なモノで、大国が五隻も保有してれば多い方、みたいな。

多分、竜とかが普通に飛んだりしてるから、そういう奴らと空で鉢合わせると勝てない、とかそういう話なんでしょう。

ともかく、なんかそんな感じの世界観で、地上では三つの大国とその近隣に小国が存在してて、今回のお話では大国の内の一つ『帝国』と、帝国と敵対しているもう一つのでかい国から支援を受けている『小国』の残党軍のお話。

戦争のきっかけとか文明レベルとかいろいろ鑑みるに、戦場のヴァルキュリアが近い気がした。

で、主人公は帝国側。小国の要人を護衛しつつ休戦条約締結に向けて頑張りましょうね、っていう大筋とは別に、主人公だけ特命が言い渡されていたり、彼が個人的な意思を持って別の使命を帯びてたりとかそういう感じ。

話のオチとしては、休戦条約は結べたけど、主人公の目的は果たせなかったよ、っていう次の巻以降を見据えた感じで終わりましたけど……まぁ別にありなんじゃないですかね。

 

ストーリーとしては、まぁまぁよかったと思う。

なんか、普通に大きな戦の中で起きる小さな争いの一部始終の中で、主人公やその周りの人間がてんやわやする、っていうよくある感じ。

中盤、若干ダルい雰囲気があったけど、それはまぁ俺の個人的な理由によるところが多い気がする。この作品が好みの人なら、まぁ読み流せるんじゃないかなってレベル。

基本的にアクションシーンが多めで、ページ数の大部分をバトルパートに費やしていた気がするけど、これも好みに合えば全然苦痛ではないんじゃないかな。

俺は道中のレオン側の視点の方が好きだったけどね。

 

問題はキャラクターと文体の二つよ。

まずキャラクター。

主人公のキャラに一切感情移入が出来ない。

主人公は国からの任務を受けている以上に、自分の大事にしているものを至上目的として行動してるんだけど、それが『家族』であるシオンの安否確認、および奪還。

お話の序盤では、シオンは死んだと思っているので、発見できなかった死体を奪還出来ればそうして故郷に埋葬し、またシオンを殺したと目される人物は見つけて仇を討つ、みたいな感じなの。

その行動が作中を徹して、一貫してるわけね。

行動にブレがないってのは評価できるポイントだと思うんだけど、その感情が行き過ぎてる感はあるよね。

どんな状況でも『シオン』という存在を最優先して行動してるから、時に周りが扱いづらかったり、なんなら他人に迷惑をかけてもお構いなしなわけ。

そのうえ、シオンも主人公と同じく軍人で、任務中に死亡している(作中で生きていることは明かされるけど)わけ。

仇を取るのは良いにしても、それに固執しすぎて軍人キャラとしては破綻している気がする。

いや多分、『軍人』としてはデザインしてないってことなんだろうな。

だとすると設定と齟齬が発生してて、読み手が混乱してもしゃーない気がする。

そもそも、自分だって敵を何人も何十人も殺しているのに、自分の身内が殺されたから激昂して扱いにくくなるヤツなんか、面倒この上ないじゃん。

そんな主人公に対して、敵役でもあるレオンの方は魅力的に映るよ。

多少暴論であっても祖国を救うために立ち上がり、百を救うために一を切り捨てる覚悟を持ち、過去に自らに毒を盛って裏切った『普通の人間』に絶望せず、味方を奮い立たせるカリスマを持ち、個人戦力としても馬鹿強くて、最後まで追い詰められたとしても決して諦めずに自分の芯を貫く。

対比してみると、こっちが主人公の方が良いまである。

ただ、レオンの方も政治屋としてはあんまり手腕がないのか、『マジでその方法で良いの?』っていう手法を取ったりしてるから、良い参謀をつけるとよいねって感じ。

マクロな視点からの構図としても、今作は大国であり他を武力で圧倒している『帝国』が主人公で、その圧力に屈してしまいそうな『小国』が敵側なわけだけど、普通はこれって逆じゃん。

なんならこれもう、作者がプロット時点では逆の視点で考えていたのではないか、って思うぐらいには主人公側が主人公として破綻してる気がする。

結果として、主人公側に魅力的に映ったキャラクターは一人もいなかった。

百歩譲って姫様はまぁ、ありがちと言えばありがちの夢見がちな姫で、彼女くらいですかね、好意的にみられたのは。

敵側だったら、最初結構嫌な奴っぽかった共和国コンビだって最後には一種の愛着すら湧いてたからね。

マジで敵役を主人公にした方が良かった。

 

文体に関して、これもなんか……もっと洗練できませんか? って感じ。

この点に苦言を呈するのはちょっと気が引けるんだけど、なんか地の文がスゲェ稚拙な感じがしてしまって。

アクションパートが大部分を占めてるってのは上述したんだけど、そのアクションパートでの地の文に、なんというか……ブツ切れ感みたいなのがあって。

~~た。~~した。~~だった。みたいな、完了形を連続させた形であったりとか、そういうのに引っかかっちゃうんだよね。

あと体言止めの多用とかもあった気がするし、なんかそういうリズムで書く人なのかなって思った。

あと行動の一つ一つを細かく書いたり、かと思ったら急にパッと引いて描写したりとか、あんまり安定しなかった感じ。

別にそれ自体は悪くないと思うんだけど、そのズームインとアウトが短いスパンで繰り返されたりして、ちょっと地の文を追いかけるのに疲れるかなって。

そこに擬音だけの行が出てきたりとかして、ちょっと稚拙さに見えてしまったかなって感じがする。

これならもっと上手い表現する人、何人も知ってるって感じ。

あえてこの作品を選ぶ理由が文体という点にはないかな。

主人公側の魅力のなさと、この地の文が使われるアクションパートがお話の頭から展開されたので、俺はもう最初っからこの作品を読む気が八割がた無くなったよね。

さらに言えばこれは極個人的な話なんだけど、セリフである「」内での改行。これがマジでキライで。

こればかりはもう生理的に嫌って話だから、これが作風なんですって言われたらもう、じゃあ俺とはご縁がなかったねって話で終わっちゃうんだけど。

これがかなり多用されておりまして。

俺はもう、この作者の本は買わないかな、って思う。

 

総合的に見て、あんまり好きな話じゃなかった。

雰囲気的に戦ヴァルを感じ取って、終盤で対戦車槍みたいなやつが出てきた時はちょっと笑ったけど、それぐらいだわ。

全般的に好みでないキャラクター達が動いて、好みでない地の文で展開され、死ぬほど嫌いな「」内の改行が多用されるっていう、大嫌いな感じでしたね。

相対的に見て、小泉花音は自重しないの方が面白かったまである。

あと、お話の途中でスゲェ雑に竜のシーンが入れ込まれたのは、スゲェ笑ったわ。悪い意味で。